2018年5月8日火曜日

「新・大阪学事始」経済編その1「天下の台所の実相」を開きました。レジメつき

「新・大阪学事始」経済編その1「天下の台所の実相」を開きました。
レジメつき。
講師は脇本祐一さん(元日経新聞編集委員)



大阪商人の不連続線
――経済のあり方が人間のありようを変える――

上)天下の台所の実相                     2018.5.8
1、権力の真空地帯が生んだ“藩際経済”の共同租界
・東アジアの秩序安定・農本主義を圧倒した重商主義・堂島米市場にみる幕府vs雄藩の確執
・西廻り航路の終着点・新興の本町人の台頭と初期豪商の没落

2、金融都市・大坂 大幅な入超を巨額の金融収入で一大債権都市に
・豪商の金融工学
*商業用語は江戸期以前の在来語
取引、相場、株式(職)、市場(庭)、手形、為替、切手、寄付(海からの寄物)、大引け(引き潮)
近世の商業・流通システムが高度に発達していた証左。在来語で欧米の商取引と結びつけた。

3、町人文化の人文主義 儒教思想に抗する人間賛歌、好色一代男にみえる数量化
*仕合わせ≠幸せ→堅実・質素・倹約
仕合わせとは偶然に出会うもので、良い仕合わせもあれば悪い仕合わせもあると考えた
・井原西鶴:仕合わせ」表現を多用。日本永代蔵、世間胸算用などの作品で
人は欲に手足がついたものぞかし、憂うる者は富貴にして憂ひ楽しむ者は貧にして楽しむ
・近松門左衛門:虚実皮膜の芸術論 実際に起こった事件を題材に人間の喜怒哀楽を描く
曽根崎心中、心中天の網島、博多小女郎浪枕、夕霧阿波鳴渡……貴いものはこの胸ひとつ
・油煙斎貞柳:紀海音の兄、禁裏御用の鯛屋。百居ても同じ浮き世に同じ花 月はまん丸雪は白妙
・小西来山:薬種商、お奉行の名さえしらずに年暮れぬ、涼しさに四ツ橋を四ツわたりけり
・慈雲尊者:真言宗の僧、正法律を提唱して雲伝神道を創始。梵語研究の大著『梵学津梁』
・上島鬼貫;伊丹の酒造業。俳諧師・財政家……美濃の松波勘十郎と大和郡山藩の財政改革を争う

4、商都は学都――「学者の金持ち」が理想の風土
・福沢にみる適塾の「実学」
・天文学の麻田剛立:門下に山片蟠桃、寛政改暦の間重富・高橋至時。孫弟子に伊能忠敬
・木村蒹葭堂:酒造業、知の巨人の博物学者、全国の文人墨客を集めた文化サロン主催
*大坂蘭学の祖・橋本宗吉:「絲漢堂」門下に大矢尚斎、伏屋素犾、斎藤方策、各務文献、中天游(医学・物理学、緒方洪庵の師)
・大坂国学者三羽烏 雑学を究め、実証的で文献的な契沖の学風を継承
①入江昌喜(両替商、榎並屋)②加藤景範(薬種商、小川屋)③江田世恭(富田屋)
学風は本居宣長のように古道にこだわらず、外来思想の儒学・仏学も排除せず
・上田秋成の宣長嫌い
*入江昌喜:3歳から学問。24歳で兄の死により家業に。47歳で甥に譲って高津で学問に専念。63歳のときに甥の死で家業に復帰。73歳から学問に戻って「万葉類葉抄補欠」を著す
・入江育斎(住友友俊):五代目・友昌の弟で、住友の家政を担う。寛保3年(1743年)、60年ぶりに両替店を再興。漢学は懐徳堂の五井蘭州、和歌は冷泉為村に師事。
*百花繚乱の学塾
・含翠堂(町人学問所の嚆矢、平野郷)・懐徳堂・片山北海(尾藤二州の師)の混沌詩社(立売堀、懐徳堂と並ぶ学塾、蒹葭堂が同人、竹山は社友)・藤沢東畡の泊園書院・篠崎三島(紙屋・両替商)の梅花社、頼春水(山陽の父、竹原の豪商)の青山社・大塩平八郎の洗心洞、
*天明・寛政期の漢詩人は川沿いに居住 片山北海、頼春水・山陽、篠崎三島・小竹

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